関西学院大学 研究活動情報

Kwansei Gakuin University Research Activities

清水陽子・建築学部教授によるマンション立地による空き家の発生に関する研究

2022.03.31

個人研究 Individual Research

近年、市街地において一定規模の敷地が空くとそこにマンションが建設されるという傾向があります。本研究は、総量的には過分となっている住戸数、乱立するマンション建設に着目し、駅に近接するマンションは郊外地域から住民を誘引し、郊外地域での空き家発生の一因となっているという仮説をもとに取り組みました。基礎的調査として駅近マンション居住者へアンケートを実施し、これまでの居住経験、以前の住居と現状、転居理由、戸建て住居との比較、今後の居住意向などから、マンションニーズの把握とマンション選択傾向を明らかにしました。
マンションはこれまで戸建てへのステップと考えらえてきましたが、本研究では回答者の64.9%が戸建てではなくマンションのみを考えていました。また、戸建ての持ち家から駅近マンションへの住み替えも29.6%となり、マンション志向の高まりを現しています。
マンションが選ばれている理由としては、広さと交通利便性などが挙げられ、特に戸建てと比較した層は交通利便性を重視しています。マンションへの定住意向はみられますが、転居前の住宅が持ち家(マンション)という方も16.9%となっており、購入したからといってそのまま住み続けるとは限らず、より良い条件へと移っていく可能性も明らかになりました。また、持ち家(戸建て)からの転居は高齢世帯に多く、自身の生活の質の向上や移動手段の確保など今後の生活を見据えた選択と考えらえます。
今回の調査により、戸建て住宅からマンションへの住み替えが明らかになりました。転居の際に前の住宅(戸建て)をそのままにしているケースもあります。今後、売却や賃貸など市場で活用されていればよいのですが、空き家として放置されている可能性も示唆されました。マンション移住と空き家増加の関連がみられるため、生活様式や志向が多様化する中、住まいや住み続けられる地域のあり方について今後もさらに調査を継続していきます。
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