関西学院大学 研究活動情報

Kwansei Gakuin University Research Activities

羽村季之・生命環境学部教授によるベルト状π電子系分子の構築に関する研究

2022.05.28

個人研究 Individual Research

羽村季之・生命環境学部教授は、ベルト状π電子系分子の構築に関する研究を行っています。
本研究では、イソベンゾフランに電子受容部位を組み込んだドナー・アクセプター型分子をコアとする反応の収束性と連続性を確保した反応集積化法の開発を目的としています。中でも、電子豊富なπ空間と電子不足なπ空間を潜在する特異な電子構造や包接π電子空間を機能性発現の場として利用するべく、シクラセンをはじめとするベルト状π電子系分子構築のための新しい合成方法論の開拓を目指しています。
これまでに、電子受容部位を有するイソアセノフランの二次軌道相互作用に基づくエンド選択的な自己環形成反応を利用してベルト状構造の構築が可能であることを見出しています。本年は、より縮環数の大きなイソアセノフランを用いたベルト状分子の合成と各種官能基変換を試みました。
その結果、キノジメタンとエポキシナフタレンの環化付加反応を活用したイソアセノフランの新規発生法の開発に成功し、これの環化二量化を利用して縮環数の大きなベルト状分子を効率良く合成することができました。さらに、これらのベルト状分子のX線結晶構造解析の結果、ベルト構造を構成する二つの多環式芳香族間は近接していることが明らかとなりました。
分子軌道計算により、二つの芳香族間にはスルースペース相互作用が生じていることが示唆され、近接π電子系の高密度共役に基づく新たな物性・機能の発現が期待できます。
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