大学共同研究「島、港町を介した文化的・社会的移動・交流とネットワーク構築に関する研究」の報告
2025.05.20
共同研究 Collaborative Research
(結論)
2024年4月1日より2025年3月31日まで、大学共同研究「島、港町を介した文化的・社会的移動・交流とネットワーク構築に関する研究」を実施した。
本研究では、従来注目されてこなかった、キリスト教徒を中心とした国内/国外双方の文化交流、社会交流の様相を明らかにすることができた。
(内容)
本共同研究では、2回の研究会と1回の調査旅行とを行った。
第1回研究会 2024年6月27日 (島国、港町と海洋文化研究センターと合同)
2024年3月関西学院大学社会学部紀要に掲載された「<史料紹介>矢内原忠雄の橘新宛書簡 : 無教会伝道者から地方の信徒への手紙」を下敷きとし、岩野祐介が「橘新資料と無教会主義キリスト教の瀬戸内ネットワーク」、赤江達也が「無教会キリスト教の瀬戸内ネットワーク ──結節点としての住友・集会・療養所──」として報告を行った。研究会には、岩野、赤江のほか、センター研究員である森田雅也、D.ガリモア、田中きく代、深尾裕造が参加し、コメンテータとして天理大学の黒岩康博准教授をお招きした。
第2回研究会 2024年9月8日(島国、港町と海洋文化研究センターと合同)
東北学院大学の松谷基和教授をお招きし、「朝鮮の西北から日本の東北へ ─平壌崇実専門学校生の東北学院留学─」と題してご報告いただいた。岩野、赤江、深尾が参加し、議論をおこなった。
調査旅行(島国、港町と海洋文化研究センターと合同)
2025年3月29日ー31日
新居浜、住友機械を拠点に活動した無教会キリスト者橘新の活動に関して調査するため、新居浜市にて調査旅行を行った。岩野、赤江、田中が参加し、資料を収集した。調査旅行に際しては、愛媛大学法文学部中川未来准教授に現地でのコーディネートをお願いし、ご協力いただいた。また天理大学黒岩准教授に同行・ご協力いただいた。住友山田社宅、マイントピア別子(旧別子銅山)東平エリア、同端出場エリア、別子銅山記念図書館、日本基督教団新居浜梅香教会、学校法人泉学園 認定こども園泉幼稚園、新居浜基督教友会館跡地(推定)、日暮別邸記念館、住友化学愛媛工場歴史資料館、広瀬公園、瑞応寺を訪ね、関係者と面談し、資料を収集した。
住友、別子銅山関連諸施設訪問を通して、新居浜における住友の重要性と存在感とを確認することができた。また日本基督教団新居浜梅香教会を訪問し、橘新のお孫さんである小早川直子氏が梅香教会に寄贈された写真類をお借りすることができた。加えて、橘等が活動拠点としていた新居浜基督教友会館(戦災で失われた)にて幼稚園が運営されていたという情報から、今回の面会者の証言もあり、教友会館の場所をほぼ特定し付近を見分することができた。加えて、泉幼稚園において黒崎幸吉ら無教会キリスト者の活動を泉幼稚園のルーツとして認識しておられることが確認できた。また橘の旧宅についても確認し、住友の工場地帯との地理関係などを知ることができた。
収集した資料については2025年5月現在分析中であり、2025年度中に資料紹介として刊行予定である。さらに今後もこれら資料を基にした報告を行いたいと考えている。
論文・著作
この間にメンバーが執筆した論文・著作としては、田中きく代・岩野監修、北米エスニシティ研究会編『北米の小さな博物館4』(彩流社、2025年2月)に収録された深尾裕造「黒人奴隷解放博物館ウィルバフォース・ハウス〔バルト海交易から大西洋奴隷貿易問題へ〕」(18-27頁)、田中きく代「『孤児列車』とニューヨーク自動援助協会〔里親制度の始まり〕」(186-193頁)岩野祐介「石の教会・内村鑑三記念堂〔アメリカとゆかりのある日本のキリスト者を記念する記念堂〕」(202-213頁)がある。また併せて、深尾裕造による英法史資料翻訳紹介「G・シャープのヨーク=タルボット意見批判-奴隷解放運動の起点として-」『法と政治』75巻4号(2025年1月)141-174頁、を挙げたい。
(展望)
日韓キリスト教交流史、日本国内の地域キリスト教史と地域ごとの交流史については、引き続き資料の収集と分析とが必要な段階である。他地域にも視野を広げつつ、特に新居浜を中心としたキリスト教交流史については継続して研究を進めていきたい。
2024年4月1日より2025年3月31日まで、大学共同研究「島、港町を介した文化的・社会的移動・交流とネットワーク構築に関する研究」を実施した。
本研究では、従来注目されてこなかった、キリスト教徒を中心とした国内/国外双方の文化交流、社会交流の様相を明らかにすることができた。
(内容)
本共同研究では、2回の研究会と1回の調査旅行とを行った。
第1回研究会 2024年6月27日 (島国、港町と海洋文化研究センターと合同)
2024年3月関西学院大学社会学部紀要に掲載された「<史料紹介>矢内原忠雄の橘新宛書簡 : 無教会伝道者から地方の信徒への手紙」を下敷きとし、岩野祐介が「橘新資料と無教会主義キリスト教の瀬戸内ネットワーク」、赤江達也が「無教会キリスト教の瀬戸内ネットワーク ──結節点としての住友・集会・療養所──」として報告を行った。研究会には、岩野、赤江のほか、センター研究員である森田雅也、D.ガリモア、田中きく代、深尾裕造が参加し、コメンテータとして天理大学の黒岩康博准教授をお招きした。
第2回研究会 2024年9月8日(島国、港町と海洋文化研究センターと合同)
東北学院大学の松谷基和教授をお招きし、「朝鮮の西北から日本の東北へ ─平壌崇実専門学校生の東北学院留学─」と題してご報告いただいた。岩野、赤江、深尾が参加し、議論をおこなった。
調査旅行(島国、港町と海洋文化研究センターと合同)
2025年3月29日ー31日
新居浜、住友機械を拠点に活動した無教会キリスト者橘新の活動に関して調査するため、新居浜市にて調査旅行を行った。岩野、赤江、田中が参加し、資料を収集した。調査旅行に際しては、愛媛大学法文学部中川未来准教授に現地でのコーディネートをお願いし、ご協力いただいた。また天理大学黒岩准教授に同行・ご協力いただいた。住友山田社宅、マイントピア別子(旧別子銅山)東平エリア、同端出場エリア、別子銅山記念図書館、日本基督教団新居浜梅香教会、学校法人泉学園 認定こども園泉幼稚園、新居浜基督教友会館跡地(推定)、日暮別邸記念館、住友化学愛媛工場歴史資料館、広瀬公園、瑞応寺を訪ね、関係者と面談し、資料を収集した。
住友、別子銅山関連諸施設訪問を通して、新居浜における住友の重要性と存在感とを確認することができた。また日本基督教団新居浜梅香教会を訪問し、橘新のお孫さんである小早川直子氏が梅香教会に寄贈された写真類をお借りすることができた。加えて、橘等が活動拠点としていた新居浜基督教友会館(戦災で失われた)にて幼稚園が運営されていたという情報から、今回の面会者の証言もあり、教友会館の場所をほぼ特定し付近を見分することができた。加えて、泉幼稚園において黒崎幸吉ら無教会キリスト者の活動を泉幼稚園のルーツとして認識しておられることが確認できた。また橘の旧宅についても確認し、住友の工場地帯との地理関係などを知ることができた。
収集した資料については2025年5月現在分析中であり、2025年度中に資料紹介として刊行予定である。さらに今後もこれら資料を基にした報告を行いたいと考えている。
論文・著作
この間にメンバーが執筆した論文・著作としては、田中きく代・岩野監修、北米エスニシティ研究会編『北米の小さな博物館4』(彩流社、2025年2月)に収録された深尾裕造「黒人奴隷解放博物館ウィルバフォース・ハウス〔バルト海交易から大西洋奴隷貿易問題へ〕」(18-27頁)、田中きく代「『孤児列車』とニューヨーク自動援助協会〔里親制度の始まり〕」(186-193頁)岩野祐介「石の教会・内村鑑三記念堂〔アメリカとゆかりのある日本のキリスト者を記念する記念堂〕」(202-213頁)がある。また併せて、深尾裕造による英法史資料翻訳紹介「G・シャープのヨーク=タルボット意見批判-奴隷解放運動の起点として-」『法と政治』75巻4号(2025年1月)141-174頁、を挙げたい。
(展望)
日韓キリスト教交流史、日本国内の地域キリスト教史と地域ごとの交流史については、引き続き資料の収集と分析とが必要な段階である。他地域にも視野を広げつつ、特に新居浜を中心としたキリスト教交流史については継続して研究を進めていきたい。
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