関西学院大学 研究活動情報

Kwansei Gakuin University Research Activities

松本和洋・法学部准教授がThe Making of Modern Law Trials, 1600-1926を用いた研究を行いました

2025.05.02

個人研究 Individual Research

 英米法におけるbailmentの事例研究において本データベースを利用している。本データベース上では80の判例を確認することができ、bailmentの判例における言及が比較的小規模であることも見て取れる。たとえば「bailment」の検索から表示される1881年のThe Bank Tax Casesにおいては、ローマ法の「mutuum」との区別について述べられており、これはbailmentの近代法上の分類が行われた1703年のcoggs. v. bernard事件と同様の傾向であることを確認することができる。一方で、bailmentに関するWilliam Jonesの著書ではなく、Joseph Storyの著書への言及を行なっている判例も見られ、一部の判例において実務的著作の影響力を推し量ることもできる。

 bailmentについては上述のcoggs事件において理論的整理が行われたことがよく知られているが、1925年のLehigh Valley Railroad Company, Plaintiff-in-Error (Defendant Below), vs. The State of Russia, Defendant-in-Error (Plaintiff Below)ではStreetなる人物の著作にも言及が行われており、本データベース収録年代における学問的状況を分析する手がかりを与えてくれている。

 以上のように、本データベースの活用からは、今日の教科書的文献では必ずしも包摂されない広範囲の判例やその本文を検索することを通じて、法概念の定着度合や議論状況を検討することができるのである。

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