関西学院大学 研究活動情報

Kwansei Gakuin University Research Activities

田中克典・生命環境学部教授によるSUMO修飾システムを用いた染色体セントロメアおよびテロメア機能の動的な制御に関する研究

2021.05.31

個人研究 Individual Research

 ゲノム情報の安定な維持・継承には、細胞分裂の際に染色体を安定に維持し、正確に分配することが肝心です。真核生物では、染色体分配に重要な機能領域としてセントロメア配列が各染色体に1か所存在し、分裂期には紡錘体微小管が結合する動原体を構築しています。また、染色体の末端を維持するための特殊な構造としてテロメアがあります。テロメアDNAには特有のタンパク質が結合し、染色体の末端を保護します。生殖細胞や一部の幹細胞などでは、テロメラーゼが活性化されており、テロメアの長さがほぼ一定に保たれています。テロメアの長さが適切に制御される事は、個体の生命維持や種の保存に重要な事象であります。セントロメアやテロメアの機能調節には、細胞周期を通してタンパク質複合体の集積と発散あるいは相互作用が繰り返される、可逆的変化を必要とします。しかし、この可逆的変化がどのようなきっかけで起きるのかは不明な部分が多く、解決すべき課題であります。
 田中克典教授の研究室では、これまでに、ユビキチン様タンパク質SUMOによる翻訳後修飾が、セントロメアおよびテロメアの機能制御に深く関わること明らかにしてきました。しかし、その詳細な分子機構には未だ不明な点が多いのが現状です。今回、SUMO修飾システムがセントロメアおよびテロメア機能をどのように動的に制御するのかを分子レベルで解明することを試みました。
 セントロメア機能にはたらくSUMO化の標的因子の絞り込みに関しては、今回遺伝学的な関連性の解析により、候補因子が存在する範囲をある程度絞り込むことができました。今後、絞り込んだ機能領域で働く因子のSUMO化修飾の有無を検証することで、標的因子の更なる絞り込みを行っていきます。
 テロメア機能に関するSUMO化の機能に関する解析については、SUMO修飾を受けたTpz1とStn1との間の相互作用に必要なStn1上の候補配列をほぼ断定することができました。さらに、SUMO化修飾が環状染色体維持の仕組みに重要な役割を果たしていることを見出しました。ある種のがんや遺伝病において環状染色体がみられ、先天的な環状染色体の形成は様々な発育異常や精神障害に関与することが知られています。SUMO化修飾が環状染色体の維持にどのように機能するかも、今後も更なる解明を目指していきます。
 
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