関西学院大学 研究活動情報

Kwansei Gakuin University Research Activities

照本清峰・建築学部教授らによる被災者の生活再建の認識の関連構造に関する研究

2022.06.30

論文 Article

照本清峰・建築学部教授らによる学術論文2編が国際学術誌International Journal of Disaster Risk Reduction及びNatural Hazardsに掲載されました。

TERUMOTO K., TSUCHIYA Y., OTAGIRI R., NAKABAYASHI H., and NAKABAYASHI I.: Individual Disaster Recovery: A framework in the long-term recovery process after the Great East Japan Earthquake, International Journal of Disaster Risk Reduction, Vol.60, 102280, 2021.6.

https://doi.org/10.1016/j.ijdrr.2021.102280

TERUMOTO K., TSUCHIYA Y., OTAGIRI R., NAKABAYASHI H., and NAKABAYASHI I.: Trends and Relationships in Victims’ Recovery Perceptions: A case study of the recovery process following the Great East Japan Earthquake, Natural Hazards, Vol.110, issue 2, pp.1061-1081, 2022.1.

https://doi.org/10.1007/s11069-021-04979-0


これらの研究では、東日本大震災の被災地域を対象として、被災者の生活再建の認識をもとにして、長期的な復興過程の動向を把握するとともに、生活再建の構成要素の関連構造を総合的に把握することを目的としています。

第1に、被災者の生活再建に関連する認識項目の時点間の相対的位置関係を図示することにより、災害発生後の生活再建の枠組みを把握することをねらいとして研究を実施しました。被災地域を対象とした長期的な調査に基づくパネルデータをもとにして、時間軸と復興の認識の程度を無次元化することにより、被災地域の復興過程の状況を把握しようとする試みです。分析結果より、生活再建の過程の中で、「基礎的な生活基盤の整備」、「公共サービスへのアクセスの回復」、「安定した住生活の確保と改善」、「社会・経済活動の再構成」、「コミュニケーション活動の再構築」の枠組みがあることが示されました。一方で長期的な災害復興過程の中で、被災者の復興の認識の総体にねじれが生じている現象が確認されました。

第2に、同様に東日本大震災の被災地域を対象として、災害復興に関連する個別要素の再建状況を調査時点ごとに集計するとともに、それらの時点間の関係性を構造的に把握するための分析を実施しました。分析結果より、被災者の生活再建の認識に対して、住宅再建、食生活、仕事、世帯収入等が規定要因となっていることが示されました。また、災害発生から1年後の仕事と収入の状況は5年後の生活再建状況の大きな規定要因になっていることが把握されました。

上記をもとにして、被災者の生活再建過程の中で求められる具現性のある支援方策のあり方を考えていきます。
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