関西学院大学 研究活動情報

Kwansei Gakuin University Research Activities

新たな装置で光合成の謎に挑む:橋本・生命環境学部教授の研究が明かす未解明のエネルギー伝達メカニズム

2023.08.10

個人研究 Individual Research

橋本秀樹・生命環境学部教授は、光合成初期過程を解明する研究に新たな装置であるTPR-TOPAS-FKH-W 自動波長可変OPAを導入し、通常の時間分解分光測定装置を改良・拡張して簡便なデータ測定装置を開発しました。太陽光エネルギーを効率的に利用する天然の光合成系がクリーンエネルギーとして注目されており、特に紅色光合成細菌の光合成系はシンプルであり、カロテノイドがエネルギーを捕集しバクテリオクロロフィルに伝達します。バクテリオクロロフィルはエネルギーを反応中心に伝え、電荷分離を引き起こしATPの合成につながります。しかし、カロテノイドからバクテリオクロロフィルへのエネルギー伝達の効率は未解明の側面もあります。

橋本教授とチームは紅色光合成細菌を試料とし、このエネルギー伝達のプロセスを解明しようとしています。エネルギー移動の効率はカロテノイドの種類や組成によって変化することが知られていますが、その原因はまだ不明です。研究チームは時間分解分光測定を用いて積極的に取り組み、新しいTPR-TOPAS-FKH-W 自動波長可変OPAを導入することで装置の制限を克服しました。従来の装置では測定範囲が限られており、少量の貴重なサンプルを使用する際に不利でした。この制限は測定に必要な光源に起因しており、特に白色光の生成が課題でした。新しい装置は1000 nm以上の長波長光を生成できるため、測定範囲外の光を使用して白色光を得ることができます。(図1参照)これにより、過渡吸収信号を測定範囲内ですべての波長で観測できるようになりました。

今後は新装置を活用して、発生した白色光を用いて可視光から近赤外領域までシームレスに測定を行い、これまで見逃されていた現象や新たな信号を発見することを期待しています。橋本教授の研究は光合成の基本的なメカニズムの理解を深め、クリーンエネルギーへの応用に貢献する可能性があります。
新規導入した装置を用いて生成した白色光(赤)と今までの白色光(青)のスペクトル。水色の塗りつぶし部分が今まで測定不能だった部分。 新規導入した装置を用いて生成した白色光(赤)と今までの白色光(青)のスペクトル。水色の塗りつぶし部分が今まで測定不能だった部分。
新規導入した装置を用いて生成した白色光(赤)と今までの白色光(青)のスペクトル。水色の塗りつぶし部分が今まで測定不能だった部分。
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