関西学院大学 研究活動情報

Kwansei Gakuin University Research Activities

山田英俊・理工学部教授と若森晋之介・理工学部助教の研究グループによる論文「最小のシクロデキストリンの存在を実証」が、Science誌の選ばれた論文「First Release」として公開されました

2019.07.22

 山田英俊・理工学部教授と若森晋之介・理工学部助教のグループは、連結したグルコースの環状体、シクロデキストリンが、グルコース3、4個で構成された場合でも存在することを実証しました。一般的なシクロデキストリンは、グルコース6~8個でできており、3、4個の環状体では構造が歪むため、存在できないとされてきました。本研究では、両者を化学合成して、その存在を実証しました。合成には、グルコース分子の柔軟化という新概念が役立っています。

 シクロデキストリンは、環状体の中央部に様々な化合物を吸着するため、味の調整や消臭剤などとして一般家庭で使われる製品にも広く利用されています。最小のシクロデキストリンには、より小さな化合物を吸着する可能性があり、応用が期待されます。

 この研究成果は、4月11日(木)14:00=米国東部時間=、Science誌の選ばれた論文「First Release」として,ホームページ上で先行公開されました。

 
雑誌名:【Science】
論文タイトル:【Conformationally supple glucose monomers enable synthesis of the smallest cyclodextrins】
著者名:【生田大喜,平田恭章,若森晋之介,嶋田浩聡,苫米地裕輔†,川崎友莉,池内和忠‡,萩森資,松本慎太郎,山田英俊】(研究は,全員,関西学院大学理工学部化学科で実施)
※現在の所属 †:東海大学工学部,‡:北海道大学理学部
DOI:【DOIコード】

【内 容】
シクロデキストリン(CD)は,環状化したα-1–4-D-グルコピラノシドのオリゴマーで,6~8量体(CD6~CD8)が主に知られており,それぞれα-,β-,γ-CDと呼ばれています。これらはD-グルコースだけで構成されるため毒性がなく,酵素法で大量合成されるため安価であることから,科学研究だけではなく一般製品にも,主にその包摂能を用いて広く活用されています。より大きなCDはCD35まで構造が確定されており,さらにCD数百まで存在することも知られています。小さな方ではCD5が最小です。さらに小さなCD3とCD4は,α-1–4- D-グルコピラノース本来の安定な立体配座を保つことが難しく,その存在はこれまで疑問視されてきました。本研究では,CD3とCD4の存在を有機合成化学を用いて実証しました。両者を合成できた要因は,グルコピラノース環を柔軟化する方法の創出にあります。すなわち,グルコースは,その3位および6位酸素をEDB基と呼ばれる適切な長さの分子構造で架橋すると,柔軟化することを発見しました。また架橋したEDB基はピラノース環のβ面を跨いでβ面での立体障害となり,CD合成に不可欠なグリコシル化反応にα-選択性を提供しました。この柔軟化と反応時の選択性によって,歪んだ構造を持つCD3とCD4の合成が可能になりました。CD3とCD4の発見は,包摂現象を用いた応用範囲を,汎用CDには包摂されない小さな化学物質へも拡大できる可能性を示しています。

【助成】文部科学省私立大学戦略的基盤形成事業S1311046,日本学術振興会科学研究費補助金JP16KT0061,新学術領域研究(反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製)JP16H01163,福岡直彦記念財団助成金
 
 
イメージ図 イメージ図
イメージ図