関由行・生命環境学部教授による多能性細胞から全能性細胞への変換機構に関する研究
2021.06.04
個人研究 Individual Research
本研究では、全能性獲得において重要なテップである胚性ゲノム活性化 (ZGA) を制御する遺伝子カスケードの同定が目的である。これまでに、転写調節因子であるCtbp1/2をES細胞でノックアウトすることで2細胞期胚と類似した特徴を持つ2細胞様が増加することを突き止めていた。そこで、本年度はCtbp1/2 DKO ES細胞において、ZGAのマスター因子であるDUX非依存的に活性化される遺伝子カスケードの同定を試みた。Ctbp1/2/Dux 3重欠損ES細胞で発現が活性化されている遺伝子群の中でも2細胞期胚で活性化される遺伝子群を抽出し、その中でPRAMEL7に着目し解析を進めた。PRAMEL7をES細胞で高発現させたところ、2細胞様細胞が増加することが明らかとなった。一方で、PRAMEL7高発現ES細胞で増加した2細胞様細胞はDuxをKOすることでほぼ完全に消失したため、PRAMEL7はDUXを介して2細胞様細胞の出現を制御していることが分かった。次に、RNA-Seqを用いて、野生型ES細胞、Dux KO ES細胞、PRAMEL7高発現ES細胞、PRAMEL7高発現Dux KO ES細胞間の遺伝子発現パターンの比較を行った。その結果、PRAMEL7高発現Dux KO ES細胞ではZscan4など一部のZGAで活性化される遺伝子の発現誘導は起きていなかったが、CrxosなどのZGAで活性化される遺伝子の一部の活性化が観察された。このことから、PRAMEL7は2細胞様細胞のマーカー遺伝子として汎用されているZscan4やMERVLの発現は活性化しないが、他のZGA遺伝子群を活性化していることが分かった。
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