山内光陽・理工学部助教らの研究グループが有機分子と無機微粒子が交互に並んだ新構造の創出に成功
2021.02.15
論文 Article
関西学院大学理工学部の山内光陽助教、山本聖也さん(理工学研究科修士課程2年)、増尾貞弘教授の研究グループは、全く性質の異なる「有機分子」と「無機微粒子」を混ぜると,それらが交互に並ぶことを発見しました。さらに、用いた有機分子のもつ「光応答性」を利用することで、無機微粒子のみでは実現が難しい光応答性の付与に成功しました。
有機無機ハイブリッド材料は、それぞれの性質が足された材料として振る舞うのみならず、融合することで初めて発現する新奇物性・機能を創出できることから盛んに研究されています。しかし、性質の異なる有機物や無機物をナノメートルレベルで合理的かつ精密に並ばせることは困難です。そこで、当研究グループが独自に開発した「有機分子の自己集合を利用した微粒子の集合手法」を利用することで、無機微粒子である量子ドットと光応答性有機分子を交互に並べ、その集合構造を光で制御することに成功しました。
本成果を基盤とすることで、数ナノメートル領域で精密制御された新たな有機無機ハイブリッド集合構造が創出されるだけでなく、刺激応答性などの有機分子特有の機能を付与させることが可能になります。これにより、従来のハイブリッド材料とは一線を画した、より優れた機能性材料の開発に繋がることが期待できます。
本研究成果は、ドイツの国際学術誌 『Angewandte Chemie International Edition(アンゲヴァンテケミー国際版)』に、2021年2月10日付けでEarly Viewに掲載され、同誌編集部により「Hot Paper」に選出されました。
<ポイント>
・有機分子の自然に集まる性質(自己集合)を利用することで、本来集まりにくい量子ドットを規則正しく並べることに成功しました。
・形成された集合体は、有機分子と量子ドットが数ナノメートル間隔で交互に並んだ、前例のない新構造をもつことが明らかになりました。
・用いた有機分子「アゾベンゼン」の光応答性を利用することで、形成された共集合体の構造や物性を制御することに成功しました。
<研究の背景と経緯>
有機材料と無機材料を融合した有機無機ハイブリッド材料は、それぞれの性質が足された材料として振る舞うのみならず、融合することで初めて発現する新奇物性・機能を創出できることから盛んに研究されています。しかしながら、形や大きさが全く異なる物質を混合した場合、それぞれの物質を規則正しく配列させることは難しく、有機物は有機物と、無機物は無機物と集まります。その結果、有機層と無機層に無秩序に分離します (層分離します)。そのため、規則正しく有機物と無機物を並べることは挑戦的課題です。そこで、本研究では、当研究グループが独自に開発した「有機分子の自己集合を利用した微粒子の集合手法」を基盤とすることで、有機分子と無機微粒子である量子ドットを合理的かつ精密に並べることができるのではないかと着想しました。
<研究成果>
当研究グループは今回、量子ドットとの吸着部位(アミノ基)をもつ新規アゾベンゼン誘導体、およびCdSe型量子ドットを低極性溶媒中で混合することで、有機分子と量子ドットが高秩序に配列した有機無機ハイブリッド集合構造が形成されることを初めて見出しました。透過型電子顕微鏡により、その構造が明らかになりました(参考図1)。さらに興味深いことに、この構造は、「アゾベンゼン誘導体の有機層」と「量子ドットの無機層」が数ナノメートルの間隔で交互に配列しており、2次元のみならず、3次元に配列していることが明らかになりました。
さらに、アゾベンゼンのもつ「光照射によって構造変化(光異性化)する」特徴(参考図2)を活かすことで、配列構造やその構造由来の発光特性を光で制御できることも実証しました。
<今後の期待>
本研究で得られた、異種物質の精密配列に関する知見は、材料科学において極めて重要な成果であると言えます。しかし、この有機分子の自己集合を利用した配列手法は発展途上であり、どこまで精密に配列構造を制御できるのかは明らかになっていません。従って、今後は、用いる有機分子や無機微粒子の種類を変える、または混合条件をスクリーニングすることで、多角的に精査していく必要があります。これにより、本手法の極限に迫ります。将来的には、ナノレベルでの分子配列が重要となってくる太陽電池への応用が期待できます。
◎研究助成
本研究は、JSPS科学研究費(18H01958, 18K14195)の支援により行われました。
【発表論文】
タイトル:A Highly Ordered Quantum Dot Supramolecular Assembly Exhibiting Photoinduced Emission Enhancement
(和訳:光で発光増大する高次に並んだ量子ドット超分子集合体)
著者:Mitsuaki Yamauchi, Seiya Yamamoto, Sadahiro Masuo
雑誌名:Angewandte Chemie International Edition (DOI: 10.1002/anie.202015535)
有機無機ハイブリッド材料は、それぞれの性質が足された材料として振る舞うのみならず、融合することで初めて発現する新奇物性・機能を創出できることから盛んに研究されています。しかし、性質の異なる有機物や無機物をナノメートルレベルで合理的かつ精密に並ばせることは困難です。そこで、当研究グループが独自に開発した「有機分子の自己集合を利用した微粒子の集合手法」を利用することで、無機微粒子である量子ドットと光応答性有機分子を交互に並べ、その集合構造を光で制御することに成功しました。
本成果を基盤とすることで、数ナノメートル領域で精密制御された新たな有機無機ハイブリッド集合構造が創出されるだけでなく、刺激応答性などの有機分子特有の機能を付与させることが可能になります。これにより、従来のハイブリッド材料とは一線を画した、より優れた機能性材料の開発に繋がることが期待できます。
本研究成果は、ドイツの国際学術誌 『Angewandte Chemie International Edition(アンゲヴァンテケミー国際版)』に、2021年2月10日付けでEarly Viewに掲載され、同誌編集部により「Hot Paper」に選出されました。
<ポイント>
・有機分子の自然に集まる性質(自己集合)を利用することで、本来集まりにくい量子ドットを規則正しく並べることに成功しました。
・形成された集合体は、有機分子と量子ドットが数ナノメートル間隔で交互に並んだ、前例のない新構造をもつことが明らかになりました。
・用いた有機分子「アゾベンゼン」の光応答性を利用することで、形成された共集合体の構造や物性を制御することに成功しました。
<研究の背景と経緯>
有機材料と無機材料を融合した有機無機ハイブリッド材料は、それぞれの性質が足された材料として振る舞うのみならず、融合することで初めて発現する新奇物性・機能を創出できることから盛んに研究されています。しかしながら、形や大きさが全く異なる物質を混合した場合、それぞれの物質を規則正しく配列させることは難しく、有機物は有機物と、無機物は無機物と集まります。その結果、有機層と無機層に無秩序に分離します (層分離します)。そのため、規則正しく有機物と無機物を並べることは挑戦的課題です。そこで、本研究では、当研究グループが独自に開発した「有機分子の自己集合を利用した微粒子の集合手法」を基盤とすることで、有機分子と無機微粒子である量子ドットを合理的かつ精密に並べることができるのではないかと着想しました。
<研究成果>
当研究グループは今回、量子ドットとの吸着部位(アミノ基)をもつ新規アゾベンゼン誘導体、およびCdSe型量子ドットを低極性溶媒中で混合することで、有機分子と量子ドットが高秩序に配列した有機無機ハイブリッド集合構造が形成されることを初めて見出しました。透過型電子顕微鏡により、その構造が明らかになりました(参考図1)。さらに興味深いことに、この構造は、「アゾベンゼン誘導体の有機層」と「量子ドットの無機層」が数ナノメートルの間隔で交互に配列しており、2次元のみならず、3次元に配列していることが明らかになりました。
さらに、アゾベンゼンのもつ「光照射によって構造変化(光異性化)する」特徴(参考図2)を活かすことで、配列構造やその構造由来の発光特性を光で制御できることも実証しました。
<今後の期待>
本研究で得られた、異種物質の精密配列に関する知見は、材料科学において極めて重要な成果であると言えます。しかし、この有機分子の自己集合を利用した配列手法は発展途上であり、どこまで精密に配列構造を制御できるのかは明らかになっていません。従って、今後は、用いる有機分子や無機微粒子の種類を変える、または混合条件をスクリーニングすることで、多角的に精査していく必要があります。これにより、本手法の極限に迫ります。将来的には、ナノレベルでの分子配列が重要となってくる太陽電池への応用が期待できます。
◎研究助成
本研究は、JSPS科学研究費(18H01958, 18K14195)の支援により行われました。
【発表論文】
タイトル:A Highly Ordered Quantum Dot Supramolecular Assembly Exhibiting Photoinduced Emission Enhancement
(和訳:光で発光増大する高次に並んだ量子ドット超分子集合体)
著者:Mitsuaki Yamauchi, Seiya Yamamoto, Sadahiro Masuo
雑誌名:Angewandte Chemie International Edition (DOI: 10.1002/anie.202015535)
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